ドライブベイも拡張スロットも必要最低限でよし
ミドルタワー=パワーはもう古い 静音PCの雄・サイコムが謳う「今こそ小型ゲーミングPC」の説得力
2025年05月21日 10時00分更新

ゲーミングPCと言えば、ミドルタワー型というイメージがある。これはある意味間違いではない。高性能なCPUを冷やすには大型CPUクーラーが必要だし、高性能なビデオカードもクーリングユニットにこだわればどうしても大きくなる。必然、PCケースも大型になりがちだ。
では、小型のゲーミングPCは存在しないのかと言えば、決してそんなことはない。しかし、ミドルクラス以下のCPUとエントリークラスのビデオカードという組み合わせだったり、ちょっと強めのCPU内蔵GPU機能を使うといった方法でお茶を濁しているものがほとんどである。
そんなゲーミングPC市場の中、ミドルクラス以上のCPUとビデオカードを搭載し、フルHDやWQHDで高画質プレイを可能にする小型ゲーミングPCを数多くリリースしているBTOパソコンメーカーがサイコムだ。
同社のラインアップは充実そのものだ。ゲーミングPCの「G-Masterシリーズ」でもデュアル水冷の「Hydro」、空冷の「Spear」、コスパ重視の「Velox」がある。ほか、高品質&保証充実モデルの「Premium Lineシリーズ」や、プロフェッショナル向けの「Leptonシリーズ」など、多くのシリーズで小型モデルを用意している。
なぜ今サイコムが小型PCにこだわるのか。その理由をプロダクトマネージャーの山田正太郎(やまだしょうたろう)氏と、マーケティング担当の佐藤明(さとうあきら)氏にうかがってきた。
最新世代のCPUとGPUで小型ゲーミングPCを実現
性能に妥協することなく小型化が可能になった大きな理由の1つには、電力効率が高い最新世代CPUの採用が挙げられる。インテルならCore Ultra 200Sシリーズ、AMDならRyzen 9000シリーズで、いずれもミドルクラスなら比較的小型の空冷クーラーで冷却できる。
「今の最新CPUって電力効率が高くて、そのおかげで従来と同じ性能なら消費電力は少ないし、発熱も少なくなっています。つまり、大きなCPUクーラーが必要なくなってるんですよね。あと、去年の夏ぐらいからNVIDIAが定義したSFF(スモールフォームファクター)に準拠した、薄くて短いビデオカードも出てきています。CPUクーラーもビデオカードも、どちらも小さくなるわけです。それなら、PCケースもちっちゃくていいよね、と」(山田氏)
もちろん、ハイエンドのCPUは従来ほどではないにせよ消費電力は大きいし、発熱も大きい。水冷のCPUクーラーを搭載しなければ、冷却が間に合わないだろう。また、ビデオカードもハイエンド製品は巨大で、ミドルタワーのPCケースでなければ装着できないものばかりだ。
こういった最高性能を求める人であれば、小型ゲーミングPCは向いていない。しかし、ゲーマー全員が4K解像度&最高画質でゲームをプレイしたいわけではない。基本に立ち返れば、ゲーミングPCに求められる性能は、遊びたいタイトルが快適に動くことだ。適度な性能を適度なコストで。それがリアルな声だろう。
「今ってCPUの性能がかなり高いので、ミドルクラスのCore Ultra 5とか、Ryzen 5とかでほとんどのゲームが快適に遊べるんですよ。もちろん、Ryzen 7 9800X3Dみたいなゲーミング性能に秀でたCPUは人気あるんですが、よほどの画質設定でない限り、そこまでの性能が必要になることは多くありません」(佐藤氏)
さまざまなタイトルを4Kの最高画質で遊びたいなら、ハイエンドのゲーミングPCが必要となるだろう。しかし、フルHDやWQHD程度など、ミドルクラスのCPUとビデオカードでも、ほとんどのゲームがある程度の画質で快適にプレイできる。
そんな性能が小型PCで手に入るなら、非常に魅力的な選択肢に見えてくる。ただし、物理的な制限により、拡張性が犠牲になるという問題が出てくる。しかし、これもさほど問題ではないという。
「かなり小さなモデルだとMini-ITXマザーボードを使いますが、PCI Expressの拡張スロットがビデオカード用の1つしかないことを気にする方もいます。でも、よくよく考えてみると、サウンドカードやキャプチャーカードを使っている人って実はそこまで多くないんですよね」(山田氏)
確かに、イマドキはサウンドやHDMIキャプチャーであれば、USBの外付け機器が充実しているし、わざわざ拡張カードで増設する必要はない。そう考えると、なるほど、拡張スロットがないというのはそこまで問題にならないだろう。
「10GbEのLANカードは……ちょっと欲しいですが、今だとオンボードでも2.5GbEが一般的ですし、そこまで重要ではないです。最近だとASRockのZ890M Riptide WiFiなんかもそうですが、Micro-ATXサイズでも拡張スロットはビデオカード用の1つだけ、というマザーボードも出てきています。それだけ、拡張スロットは優先順位が低いんですよ」(山田氏)
もう1つ、Mini-ITXで問題視されやすい点がメモリースロットの数だ。Micro-ATXやATXであれば4本が一般的だが、Mini-ITXでは2本。つまり、搭載できるメモリーの上限が半減してしまう。
しかし、現在サイコムのBTOメニューでは64GB×2が選択できる。2本しかメモリースロットがなくても、合計128GBまで搭載できるのだ。これだけの容量があってもメモリーが足りないという人は、そう多くはないだろう。
ストレージもM.2スロットの普及で、ドライブベイの存在意義は下がってきていると山田氏は語る。
「イマドキはマザーボードにM.2スロットが2つとかありますし、2.5インチベイなら小型PCケースにもあります。3.5インチHDDが増設できないじゃないかと言われればその通りですが、今うちでHDDを追加購入している人は全体の約7%です。裏を返すと、93%の人は3.5インチベイが不要なんですよね。となると、もうちっちゃいPCケースでいいよねって」(山田氏)
地味ながら、小型PCの最後のハードルは電源ユニットだ。しかし、最近ではサイズが小さなSFX規格の製品の容量が増え、価格も下がってきたことから、クリアーできるようになったという。
そんな小型ゲーミングPCの急先鋒がPremium Line Miniだった。このPCはFractal DesignのPCケース「Terra Silver」を採用したもので、容量10.4Lという超コンパクトなモデルだ。

2023年に登場した小型ゲーミングPC「Premium-Line B660FD-Mini/T」。現在はその後継にあたる「Premium-Line B860FD/T」を販売している。PCケースはそのままに、標準構成のCPUは「Core Ultra 5 235」、ビデオカードは「GeForce RTX 5060 Ti 16G VENTUS 2X OC PLUS」と最新世代にリフレッシュしたモデルだ
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