
「IoT」という言葉が広く使われ始めたのは、2010年代後半からと言われます。それから10年近く経った現在では、「IoT対応」をうたうデバイスや家電、産業機器が身の回りにあふれており、IoTという言葉はすっかり市民権を得ています。
それでは、IoTとはいったい「何」なのでしょうか。あらためてそう質問されると、シンプルに答えるのは意外と難しいことに気づきます。日本では、原語である「Internet of Things」を直訳して「モノのインターネット」と呼ばれた時期もありましたが、日本語として不自然なよく分からない訳語であり、むしろ本質を理解しづらくしてしまった気がします。
単に「モノがインターネットにつながる」だけでは、IoTは価値をもたらしません。その特徴を生かして実現される機能やサービスこそが、大きな価値を生むと言えます。そこで、ネットにつながらないモノ=非IoTデバイスにはできない「IoTデバイスだからこそできること」を考えてみましょう。大まかにまとめると、次のようになります。
■IoTデバイス「だからこそ」できることの例:
・デバイスデータの一元的な収集、蓄積
・リアルタイムでのデータ分析、状態把握、自動制御
・リモートからの監視や操作
・多数のデバイスの一括管理、更新(アップデート)
さらに抽象化してまとめると、IoTは、インターネットにつながる特徴を生かして「データ活用」や「リモート制御/管理」を実現するための技術(モノ)と言えます。さまざまなIoT活用事例を眺めてみても、IoTの価値の源泉は、突き詰めるとこの2つに集約されそうです。
■IoT活用事例集「and SORACOM」より
・温湿度管理を極めるためのAIとIoT 青森の冷蔵庫メーカーのR&Dが熱すぎた
・安価で設置がとにかく簡単 両毛丸善は90台超の規模でソラカメ導入
つまり、IoTは「モノのインターネット」ではなく、「インターネットにつながることで大きな付加価値を生むモノ」であると言えます。ただし、「モノ(デバイス)だけでは付加価値は生まれない」点にも注意が必要です。次回の記事ではそのあたりを深掘りしてみましょう。